ぱたへね

はてなダイアリーはrustの色分けができないのでこっちに来た

組み込みプロセッサ技術

組み込み用のプロセッサについて素晴らしい本を見つけたので紹介します。
http://www.amazon.co.jp/dp/4789845494

内容

組み込みで使用されるプロセッサについて、基本的な概念から最新の技術まで、幅広くかつ深く説明してある本です。基本を押さえながらも最近の技術が説明されていてとても勉強になりました。この手の本(特にCQ出版)は、執筆者の所属している組織が記事に色濃く反映されます。例えば、日立出身の方であれば、ルネサス系のCPUが中心となって書かれる事が多いです。この本はそういう所が無く、各社CPUについて公平に取り上げられています。

昨今の組み込みでは、CPUが単体で使われるよりはSOCの中で使われる事が多く、この本ではSOCに関しても詳しく書いてあります。デバッグ手法についても、JTAG ICEまではこの手の本では出てくるのですが、RTLシミュレータやFPGAによるエミュレーションまで突っ込んであるのは珍しいです。

本自体は海外のハードカバーの物に比べると薄いですが、パイプライン一つ取ってみてもパタヘネより詳しく書いてあります。最近のCPUに言及すると、パタヘネだけでは追いつかないのでしょうが、この一点でも内容の濃さがわかります。

基本的なペリフェラルの説明があるのもうれしいところです。

マルチコアについて

9章がマルチコアの話になっていて、マルチコアにおける問題点について解説してあります。
教科書的なキャッシュやテストアンドセット命令だけでなく、

・マルチコア構成時の割り込みコントローラやDMAコントローラがどのようにあるべきか
・省電力とマルチコア
・トランザクショナルメモリ
・マルチコアにおけるデバッガ

まで言及してあるのは素晴らしいです。キャッシュだけ、メモリだけについて書かれた資料があるのですが、実際にSOCにするにあたっての問題点が書いてある本は珍しいです。

最後に

全体的に明らかな間違いもなく、まとめ方、説明の文章とも素晴らしい本になっています。内容に比べて値段も安く、4月から組み込みの世界に入ってくる若い人には、是非読んで欲しい本です。私のように昔組み込みをやっていた人間にとっては、自分の知識と、技術のトレンドのギャップを知るのにはちょうどよい内容だと思います。

前書きの方に著者の名前が挙がってますが、さらに突っ込んだCPU固有の話は「マイクロプロセッサ・アーキテクチャ入門」がお勧めです。こちらも非常に良い本です。