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デジタル写真計測の話

Computer Vision Advent Calendar 2012の11日目という事で、私が仕事で関わっている業界について書いてみました。

デジタル写真計測とは

 デジタル写真計測とは、デジタル画像を使用した測量の事です。あまり聞きなれない言葉ですが、デジタルカメラを利用して対象物の長さを測ったり、それらを元に正確な地図を作成したりするような技術です。身近なところではGoogle Earthがわかりやすい例です。Softcopy Photogrammetryや、digital photogrammetryとも呼ばれます。

 画像を並べてみるとイメージがわくでしょう。digital photogrammetryの画像検索

なぜデジタル写真測量なのか

 デジタル測量に対して従来の測量方法をアナログ測量と呼ぶこともできますが、既存の測量方法がすべてデジタルによる処理におきかわるわけではありません。まだまだ人間の目で確認した方が速く正確なところも存在します。データの撮影自体はデジタルで行われていますが、その後の撮影データの処理は完全にデジタル化されておらず、その処理部分にComputer Visionの技術が使われています。デジタル化のメリットは、データの加工が楽、複雑な計算を自動的に行ってくれる等、いくつもありますが、2000年頃から本格的にデジタル測量の技術が開発されてきました。その背景にはこのような事情があります。

デジタルカメラの性能向上

 画素数が増えたことで、アナログのフィルムに負けない精度が出せるようになりました。また専用のカメラをつかわずとも、民生用の安価なカメラで十分な精度がだせるようになりました。

GPS技術との結合

 GPS(Global Pointing System)とIMU(Inertial Mesurement Unit))が簡単に使用できるようになり、撮影時の場所が簡単に取得できるようになりました。これにより航空写真が非常に扱いやすい物になりました。IMUの方はあまり聞き慣れない言葉ですが、日本語で慣性計測装置と呼ばれ加速度と各速度をリアルタイムに取得できます。IMUから取得されたデータと、速度、高度、移動方向から、飛行機と測定対象物の相対的な位置関係が正確に計算できます。GPSとIMUが組み合わされるまでは、複数の画像(アナログの場合はフィルム)データから、同じと思われる点の組を6〜10点選び出し、画像間の相対的な位置を計算していました。

コンピュータの性能向上

 測量でで使うような大きな画像に対して、従来では計算に時間がかかっていたものがすぐに結果がでるようになりました。理論上はできるが計算時間がかかりすぎるようなアルゴリズムも、コンピュータの性能向上が計算速度の問題を解決しました。合わせてストレージの値段も下がり続けています。OpenCVのようなComputer Visonそのものを扱うライブラリや、Google Ceresのような重要な計算部分のエンジンが公開されていて、さらにデータが扱いやすくなっています。

デジタル測量の欠点

 デジタル測量にもいくつかの問題があります。
 一番の難しさは「認識」という点において、まだまだ自動化が難しいという点です。複数の画像から同じ点を抜き出すだけでなく、画像によっては対応する点が無いという判断はまだまだコンピュータには難しい計算です。処理の結果が妥当な値になっているかの判断も、人間であれば一目でわかる事でも評価関数を定めないといけません。その評価関数も、どの状況に対しても万能に使える物は存在しません。この問題はまだまだ研究段階で、完全に自動化するにはいくつかのブレークスルーが必要です。

 もう一つが法整備の問題です。例えば国内の公式な位置情報はGSPから得た値ではなく、国土交通省が定める基準点(永久標識)を元に行われます。311の大災害では、基準点そのものが移動してしまったため、まず新しい基準点を定めないと復興計画が進まないという問題がありました。この場合、途中の作業はGPSを用いた測量で行われるとしても、最終的には基準点を定める必要がでてきます。また、デジタル測量技術を用いて建設物の調査をした時に、それが国土交通省の定める保守に相当するのかどうかがはっきりと決まっていません。順番としては、目視頼みの点検をデジタル測量に置き換える事が技術的に可能になった時点で、はじめて法改正の動きがでてきます。こちらについては、技術と時間が解決してくれるでしょう。

応用事例

この分野の応用事例については、デジタル写真測量の理論と実践に、いくつかの事例が紹介されています。

というわけで、Computer Visionの応用分野の一つ、デジタル測量技術の紹介でした。